カーボローディングとは
- カーボローディング、あるいはグリコーゲンローディングとは、長時間行う競技や試合に取り組むアスリートやスポーツ選手が採用している食事法の一つです。
- 運動するためにはエネルギーが必要で、そのエネルギー源は主として体の中の脂肪と糖質です。
- 脂肪は体に沢山蓄えることが可能で、1gで9kcalのエネルギーを産み出す素晴らしい源なのですが、エネルギーへの変換効率がよくないため、即効性がなく、スポーツ競技などにはあまり向いていません。
- 一方、1gで4kcalのエネルギーを産み出す糖質は(なお、タンパク質も同じエネルギー産出量)エネルギーへの変換について即効性があるため、運動時には脂肪よりも先にエネルギーとして利用されるため、スポーツ競技に向いています。
- スポーツ競技の前に、この糖質を効果的に体に蓄える食事法がカーボローディングです。糖質を含む炭水化物(Carbohydrates)を蓄える(Loading)方法です。
- なお、体内の糖質が不足すると脂肪が消費される割合が増えていきます。体に豊富に蓄えられている脂肪をエネルギー源として活用することでスタミナ持続につながるため、あえて、体内の糖質を減らした状態で体を動かして、脂肪燃焼を誘引させるトレーニング方法があるが、糖質枯渇により自分の筋肉(タンパク質)を分解してエネルギーを産み出そうとする(結果的に筋肉量が減る)リスクもあるため、パフォーマンスを下げないためには、競技・試合の本番時には、糖質をしっかりと蓄えて取り組んだほうがいいと考えられます。
カーボローディングの必要性
- 炭水化物は糖質と食物繊維からなり、体に取り込まれた糖質は、筋肉や肝臓にグリコーゲンとして貯蓄されます。個人差はありますが、肝臓に約100g、筋肉に300g程度、合計で400g程度、貯蔵することができます。
- そして、このグリコーゲンが血液中に放出されたグルコースとなってエネルギーとして使われることになります。
- 前記のように、糖質・グリコーゲンは、1gで4kcalのエネルギーを産み出すので、体に蓄えられているエネルギーは、1,600kcal程度となります。
- ランニングのために必要なエネルギー量は、体重×距離で計算します。
- 例えば、体重50kg/60kgの方がフルマラソンを走るために必要なエネルギー量は、約2,110/2,532kcalとなります。
- すなわち、フルマラソンを走るためには、普段の体に蓄えられているグリコーゲンのエネルギーだけでは、500〜1,000kcal程度、不足することになります。
- カーボローディングをすることで、肝臓、筋肉とも最高で普段の2倍程度のグリコーゲンを蓄えることができると言われています。
- カーボローディングが上手くいけば、体内に蓄えたグリコーゲンだけでフルマラソンの距離を賄えるということです。
- また、カーボローディングにより運動パフォーマンスが向上するとの報告もあります。
- なお、上記のことから、ハーフマラソンよりも短い距離の競技や試合には基本的にはカーボローディングの必要性はないことになります。
- 体のコンディションを整えるぐらいの意識で、試合の前日・前々日から高炭水化物・低脂質にして、生物や食物繊維、乳製品を多く摂ることを控える程度で良いかと思います。
カーボローディングの方式
- カーボローディングには、旧式と新式があります。
- 旧式は、試合の約1週間前から4日前までは、運動量を増やしつつ、高タンパク質・低炭水化物(食事全体の40%程度)の食事を心がけることで、体内のグリコーゲンを一旦、枯渇させます。
- そして、試合の3日前からは運動量を減らし、高炭水化物の食事(食事全体の70%〜80%)に切り替えることで、体のリバウンド効果を利用し、グリコーゲンを体内に効率的に取り込みます。
- ただ、この旧式の方法では、4日前までの低炭水化物の時期に、糖質不足で、疲労が抜けにくくなり、また、体調を崩してしまう場合が多かったようです。
- そこで、最近、採用されている新式では、試合の約1週間前から4日前は、運動量は減らしつつ、食事は普段と変わりない状態(糖質50~60%、たんぱく質10~15%、脂質25~30%)を維持し、体内のグリコーゲンは枯渇させずに維持します。
- そして、試合の3日前からは旧式と同様、運動量を減らし、高炭水化物の食事(食事全体の70%〜80%)に切り替えることで、グリコーゲンを体内に取り込みます。
- グリコーゲンの蓄積量増加の割合は、旧式よりも低いものの、90%近く(普段の80%増し)の効果があるとの報告もあるので、フルマラソンを走り切るだけのグリコーゲンを蓄積することも可能です。
カーボローディング時の食事
- 和食派
- 白米、うどん、餅、和菓子(カステラ、羊羹、饅頭)
- 玄米は食物繊維が多いため避けた方が良いです。
- 洋食派
- パスタ、パン
- パスタは白米に比較し、たんぱく質、食物繊維、カルシウム、ビタミンB2、ナイアシンが多く含まれており、栄養素をバランス良く摂ることができます。
- また、パスタは、低GI食であるため(うどんはGI 85、食パンはGI 70、精白米はGI 88であるところ、乾パスタはGI 41)、太りにくいです。GIとは、Glycemic Indexの略で、食後の血糖値の上昇度合いを示したものです(ブドウ糖を取った時の血糖値上昇度合いを100として算出)。血糖値が高くなると体内にインスリンが沢山分泌され、脂肪が蓄えられやすくなってしまします。つまり、GIが低い方がインスリンの分泌が抑えられるので脂肪が蓄積されにくくなります。
- ただし、パスタの場合には、ソースや具材は、脂質の少ないものを選ぶ方が良いです。
- パンの場合、脂質が多いもの(クロワッサン、クリームパンなど)は避ける必要があります。フランスパンなどが良いです。フランスパンにはバターではなく、はちみつやジャムを塗ると良いです。
- その他食材
- じゃがいも、さつまいも、里芋、果物
- ただし、芋類は食物繊維も多く腸内でガスを発生しやすいので試合直前には注意が必要です。
- 体内での吸収を良くするために、一度に多量に取らずに、1日のうち数回に分けて少しずつ取っていくと良いです。
- また、単一の食材から多量に取るよりも、多種の食材から得る方が体にとっては良いです。
- クエン酸はグリコーゲン蓄積に効率的に働くため、食事の際に、クエン酸を多く有する食材、例えば、レモン、オレンジ、キウイ、パイナップル、梅干し、酢などを取ると良いです。
- カーボローディング時には他の栄養素が不足しがちなので、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどが含まれていて完全栄養食と言われている卵を取ると良いです。ただし、レース当日は、生卵は避けて、加熱したものの方が消化が良くなります。
- また、タンパク質を取るには、脂質が少ない鶏ムネ肉や豚ヒレ肉、白身魚などが良いです。
カーボローディング時の注意事項
- グリコーゲンが体内に蓄積される際、つまり、細胞に取り込まれる際に、グリコーゲン:水分=1:3の割合で吸収されます。
- 例えば、400gの糖質を取り込んだ場合に、合わせて1,200gの水分も取り込むので、単純計算で、1.6kgの体重増加になります。そのため、カーボローディングの際には、急な体重増加に注意する必要があります。
- カーボローディング時に食事において、タンパク質や脂質を減らすことによって、総摂取カロリー量を減らすことが大事になってきます。
- また、急に体内のグリコーゲンを増やすと、グリコーゲンを代謝しきれず、内臓に負担がかかる場合もあります。そのため、体調もよくみながら、カーボローディングを進める必要があります。
- カーボローディング中は野菜の量が減りがちになるので、ビタミン不足になりがちです。そのため、オレンジジュースなどを取ると良いです。前記のように、グリコーゲン蓄積に有効なクエン酸も合わせて取ることができます。
レース前日の食事の留意事項
- アルコールは取らないほうが良いです。糖質をエネルギー源に変えるときに使われるビタミン類がアルコールの分解に使われてしまいます。また、睡眠の質が下がり、肝臓に負担がかかり脱水になりやすく、レースでのパフォーマンスを落とすことになります。
- 生モノやお腹を壊す危険性があるため、避けた方が良いです。
- 食物繊維を取り過ぎると、消化不良を招く危険性があります。
- 脂っこいものは胃もたれを起こし、睡眠の質が下がるので避けたほうが良いです。
レース当日の食事
- 糖質とビタミンB1を取ることが大事です。
- おにぎり(消化が悪い海苔はなしで。具はクエン酸が取れる梅干しやビタミンB1が取れるたらこなどが良いです)、サンドイッチなどに、糖質とビタミンが豊富なバナナ、オレンジジュースを合わせて取ると良いです。ただし、普段食べ慣れたものが良いです。
- お餅も良いのですが、普段、食べ慣れていない人はお腹の調子が悪くなる場合もあるので避けた方が良いです。お餅を食べるならば、ビタミンB1/B2が含まれるきなこがかかった安倍川餅が良いです。
- 前記のように、完全栄養食の卵(ただし、加熱したもの)も良いです。
- 朝食は、レースのスタートの3時間前までに取っておくと、消化が終わり、エネルギー源として蓄えられた状態でスタートを迎えることができます。
- また、スタートの1時間前までにカステラ、バナナ、エネルギー系ジェル、水分(BCAA・アミノ酸飲料など)など消化吸収が早いものを取っておくことも良いです。スタート時にちょうどエネルギー源となります。